ニュースの概要

全国賃貸住宅新聞が報じたところによると、トランクルーム事業を展開するJapan Storageが収益性の改善に取り組んでいるという。具体的な施策の中身までは報道からは読み取れないが、稼働率の積み上げだけに頼ってきたトランクルーム業界が、単価設計や契約構成の見直しへと軸足を移しつつある動きの一例といえる。賃貸住宅市場そのものが人口減少で頭打ちになる中、都市部の収納スペース不足や法人の書類・備品保管需要を背景に成長してきたこの分野で、大手事業者の収益構造そのものに焦点を当てた報道が出たことは、業界の次の競争軸を占ううえで見逃せない動きだ。

引用元: Japan Storage、トランクルームの収益性向上(全国賃貸住宅新聞)

分析・見解

稼働率頼みの経営から単価設計重視への転換点

トランクルーム業界ではこれまで「空室をいかに埋めるか」が収益の生命線とされてきた。空いている区画はそのまま赤字要因になるため、稼働率(=利用されている区画の割合)をとにかく高めることが最優先課題だった。しかし稼働率が8〜9割を超えると、それ以上の上積みは値引き合戦を招くだけで、かえって収益を押し下げてしまう。今回のJapan Storageの動きの背景には、稼働率の天井が見え始めた事業者が、区画あたりの単価をどう組み立てるかに関心を移している実態があると見ている。立地や区画サイズごとに価格帯を細かく分ける手法や、長期契約者への割引よりも短期・法人向けの高単価プランを厚くする手法が、典型的な打ち手になる。

法人需要の取り込みが利益率を底上げする

書類保管や季節什器、ネット通販の在庫置き場といった法人契約は、個人の荷物保管に比べて契約期間が長く、解約率も低い傾向がある。坪単価こそ個人向けと大差なくても、営業コストや退去後の清掃・原状回復の手間が少なく済むため、実質的な利益率では優位に立ちやすい。収益性向上を掲げる事業者の多くが、個人中心だった顧客構成を意図的に法人寄りへ組み替え始めているのではないか。

屋外コンテナ型と屋内個室型でコスト構造はまるで違う

トランクルームには大きく分けて、屋外にコンテナを並べる型と、既存ビルのフロアを区切って使う屋内型がある。屋外型は土地の取得や造成費がかかる一方で建物の維持費は低く抑えられる。屋内型は空きビルの有効活用になるものの、空調やセキュリティの運用コストが重くのしかかる。収益改善の打ち手も型によって異なり、屋外型なら大型区画を小口に割って坪単価を引き上げる方法が、屋内型なら稼働率の天井を空調・電気代の削減で補う方法が有効になりやすい。都市部の物件回転率を考えると、屋内型での改善余地にこそ注目する価値があるだろう。

賃貸住宅会社の副業から独立事業への格上げが進む

全国賃貸住宅新聞がこの話題を取り上げたこと自体、トランクルームがもはや賃貸住宅会社の「余剰地活用」にとどまらず、独立した収益部門として扱われ始めていることの表れだ。地方都市で空き家・空室が増えるほど、賃貸経営を下支えする手段としてトランクルームへの転用は増えていく。今後は賃貸住宅会社自身がトランクルーム運営のノウハウを内製化し、専任チームを置く動きが加速すると見ている。

ビジネスへの影響

賃料改定より先に契約期間と違約金の設計を見直す

多くの事業者は賃料そのものを値上げする前に、契約条件の見直しという手を打たずに残している。例えば最低契約期間を3ヶ月から6ヶ月に延ばすだけで解約率は下がり、退去のたびに発生する清掃や原状回復の人件費を抑えられる。さらに違約金(=途中解約時の追加費用)の設定水準を見直すことで、短期利用者の駆け込み解約も抑制できる。賃料は据え置いたまま営業利益を改善したいなら、まず契約条件の棚卸しから着手するのが現実的だ。

法人営業とサブスク型保管サービスへの参入時期を見極める

個人向け市場は都市部ですでに飽和気味だが、中小企業の書類や備品保管といった法人向け需要にはまだ開拓余地が大きい。自社で営業人員を割けない事業者は、法人営業に強い既存プレイヤーとの提携や、集荷・配送込みの保管サービス(トランクルームと宅配収納を組み合わせた形態)への参入を検討する価値がある。月額数千円のサブスク型にして解約のハードルを下げる一方、最低利用期間を設けて早期解約を抑える設計も有効だろう。

他社の成功事例をそのまま真似ても効果は出ない

Japan Storageのような先行企業の施策を表面だけなぞっても、同じ結果にはなりにくい。最適な単価設計は立地の競合密度、法人需要の有無、既存契約者の構成によって変わるため、まずは自社の稼働率・解約率・法人比率を数値で可視化し、どこがボトルネックかを特定してから打ち手を選ぶことが欠かせない。稼働率は高いのに利益が伸びない施設ほど、単価と契約構成の見直しから着手すべきだ。

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