トランクルーム市場の規模推移と成長を表す上昇イメージ
REPORT 01

市場概況 ── トランクルーム市場規模と成長要因

国内セルフストレージ市場の規模推移、普及率の日米比較、拡大を支える構造的な成長要因を整理します。

国内トランクルーム市場規模の推移

国内のトランクルーム・セルフストレージ市場は、2026年時点で年間売上高ベース約900億円規模に達していると推計されています。2010年代前半には300億円台にとどまっていた市場が、10年余りで3倍近い規模に拡大した計算であり、不動産関連セクターの中でも際立って安定した成長を続けてきた分野と評価されています。年平均成長率は直近でも5〜7%程度を維持していると見られ、レンタル収納という業態が一時的なブームではなく、都市生活のインフラとして定着しつつあることを示しています。

拠点数ベースでは、屋内型トランクルームと屋外のコンテナ収納を合わせて全国で約13,000拠点、収納室数では60万室を超える水準に達していると推計されています。特に2020年代に入ってからは、都心部のオフィスビルや商業ビルの空きフロアをコンバージョンした屋内型トランクルームの出店が加速しており、市場の成長ドライバーが郊外のコンテナ収納から都市部の屋内型へと移行している点が近年の特徴です。

国内セルフストレージ市場規模の推移(編集部推計)
市場規模(億円) 前年比 主なトピック
2018約550+6%コンテナ収納の郊外出店が牽引
2020約650+7%在宅時間増加で収納需要が顕在化
2022約740+6%屋内型の都心出店が加速
2024約830+6%M&Aによる業界再編が本格化
2026約900+5%宅配型収納の伸長、投資マネー流入

市場規模の内訳を事業形態別に見ると、屋内型トランクルームが全体のおよそ半分を占め、コンテナ収納が約4割、宅配型収納その他が残りを構成すると見られています。単価の高い都市部の屋内型が構成比を高めていることが、室数の伸び以上に金額ベースの市場拡大を押し上げている構図です。

賃料単価の面でも、緩やかな上昇基調が観測されています。都心の屋内型トランクルームでは、空調・セキュリティ品質の向上と法人利用の増加を背景に、坪あたり月額賃料の水準が切り上がっており、成熟拠点では毎年の契約更新時に賃料改定を行う運用も定着しつつあると言われています。室数の増加と単価の上昇という二つのエンジンが同時に働いている点が、現在の市場局面の特徴であり、これは需要が供給の伸びをなお上回っていることの証左と解釈されています。

普及率の日米比較 ── 伸びしろの大きさ

セルフストレージ産業の将来性を語る際に必ず参照されるのが、普及率の日米比較です。セルフストレージ発祥の地である米国では、全世帯の約10%がストレージを利用しており、国民1人あたりの収納面積は約0.9平方メートルに達すると言われています。米国のセルフストレージ市場は年間4兆円を超える規模を持ち、専業REITが複数上場する確立された不動産アセットクラスとなっています。

これに対して日本の世帯利用率は約0.7%、1人あたり収納面積は0.01平方メートル台にとどまると推計されており、単純比較で10倍以上の開きがあります。住宅事情や収納文化の違いを考慮しても、日本市場には相当な伸びしろが残されているという見方が業界内では支配的です。特に東京23区の世帯利用率は全国平均を大きく上回る1%台後半に達していると見られ、都市部から普及が進む米国と同様の経路をたどりつつあります。

世帯利用率の国際比較(推計)
米国
約10.0%
豪州
約5.5%
英国
約2.5%
東京23区
約1.7%
日本全国
約0.7%

※各種業界推計をもとに編集部作成。利用率は概数です。

もっとも、日米の普及率格差をそのまま成長余地と読むことには慎重論もあります。米国は住み替え頻度が高く、庭付き戸建てからの引っ越しに伴う一時保管需要が構造的に大きいのに対し、日本は転居率が低く、収納need(ニーズ)の性質が異なるためです。日本市場の成長は「米国型への収斂」ではなく、都市居住の狭小化やEC化といった日本固有の需要構造に支えられていると理解するのが実務的です。

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市場拡大を支える成長要因

国内レンタル収納市場の拡大は、複数の構造的要因が重なった結果と分析されています。第一に、都市部における住宅の狭小化です。都心マンションの平均専有面積は縮小傾向が続いており、住戸内の収納面積も減少しています。住宅価格の高騰により「収納のために広い部屋を借りる」よりも「外部に収納を借りる」方が合理的という判断が働きやすくなっており、月額数千円からのトランクルームが住宅の延長として選択されています。

第二に、遊休不動産の活用ニーズです。オフィスビルの空室フロア、閉店した店舗、使い道の定まらない郊外の遊休地など、供給側にもストレージへの転用動機が存在します。トランクルームは飲食や物販に比べて内装投資が軽く、賃料負担力は劣るものの空室を長期安定収益に変えられるため、ビルオーナーや土地所有者にとって現実的な土地活用・空室活用の選択肢となっています。

需要側・供給側の要因整理

  • 需要側: 都市居住の狭小化、EC利用拡大に伴う法人在庫保管、趣味用品・季節用品の外部保管、防災備蓄の分散保管、相続・遺品整理に伴う一時保管
  • 供給側: 遊休不動産・空室フロアの転用ニーズ、コンテナ収納による低投資の土地活用、無人運営技術の成熟による運営コスト低下
  • 資本側: 安定稼働率と解約率の低さに注目した投資ファンド・REITの参入、金融機関のストレージ向け融資姿勢の改善

第三の要因として、無人運営テクノロジーの成熟が挙げられます。スマートロックや遠隔監視カメラの普及により、常駐スタッフなしで数百室規模の施設を運営できるようになり、損益分岐点が大幅に低下しました。これにより従来は採算が合わなかった中規模物件でもストレージ事業が成立するようになり、出店可能な物件の裾野が広がっています。

加えて、社会的な認知度の向上も見逃せない要因です。かつてトランクルームは「特殊な保管手段」という位置づけでしたが、駅前や住宅街での出店が進み、日常の生活動線上で看板を目にする機会が増えたことで、収納の外部化に対する心理的なハードルは大きく下がりました。テレビや動画メディアで収納・片付けをテーマとするコンテンツが定着したことも、レンタル収納の利用を後押ししていると言われています。認知の広がりは検索需要の増加として定量的にも観測されており、「地名×トランクルーム」の検索ボリュームは長期的な増加トレンドにあると見られています。

地域別に見る市場構造

市場の地域構造を見ると、首都圏への集中が顕著です。全国の収納室数のうち首都圏が約半分を占め、近畿圏・中京圏を合わせた三大都市圏で7割超に達すると推計されています。特に東京23区では、駅徒歩圏のビルインタイプの屋内型トランクルームが集中的に出店されており、1室あたり月額賃料も全国平均を大きく上回ります。

一方、地方圏ではコンテナ収納が主流です。土地価格が低く、幹線道路沿いの遊休地にコンテナを設置する低投資モデルが成立しやすいためです。ただし地方は商圏人口が薄く、供給が少し増えるだけで需給が緩む脆弱さも抱えています。エリアごとの需給バランスの見極めは、出店・投資判断における最重要論点の一つであり、開発・投資実務のレポートで詳述します。

今後の地域展開として注目されるのは、政令指定都市とその周辺部です。札幌・仙台・広島・福岡といった地方中核都市では、都心部の単身世帯増加と分譲マンションの供給が続いており、首都圏で確立された屋内型の出店モデルが移植可能な条件が整いつつあると見られています。首都圏での競争激化を受けて、大手事業者が地方中核都市への展開を加速させる動きは、今後数年の市場拡大の主要なフロンティアになると考えられます。

KEY POINT

首都圏は「賃料単価は高いが競争も激しい」市場、地方圏は「投資額は軽いが需要の厚みが薄い」市場です。同じセルフストレージ事業でも、エリアによってリスクとリターンの性質が大きく異なります。

市場を読む主要指標 ── 稼働率と賃料単価

セルフストレージ事業の市場分析では、稼働率と賃料単価(坪あたり月額賃料)が基本のKPIとなります。業界全体で見ると、開業から3年程度を経た成熟拠点の稼働率は80〜90%で安定するケースが多いと報告されています。住宅賃貸と異なり1室あたりの面積が小さく契約が分散するため、稼働率の変動が緩やかで収益の予見性が高いことが、ストレージ投資がオルタナティブ資産として注目される理由です。

ただし、開業初期の立ち上がり速度(リースアップ期間)は立地と販促によって大きく異なり、月間の新規契約が想定を下回ると投資回収期間が長期化します。また、名目賃料だけでなく、キャンペーン割引後の実効賃料で収支を見ることが重要です。競合が近接出店したエリアでは割引競争により実効賃料が名目の8割程度まで低下する事例もあると言われており、稼働率と実効賃料を掛け合わせた「実効収益単価」で市場を観察する視点が求められます。

補助的な指標としては、解約率(チャーンレート)と平均利用期間、1契約あたり月額収入、問い合わせから成約までの転換率などが用いられます。特に解約率は施設の商圏適合度を映す鏡であり、月次2%を安定的に下回る施設は需要とのミスマッチが小さいと判断できます。市場全体としては、これらの運営KPIの業界標準化が進むことで、施設間・事業者間の比較可能性が高まり、投資評価の精度が向上していく段階にあります。

本レポートの各論として、事業形態の類型では屋内型・コンテナ型・宅配型の収益構造の違いを、需要側の変化では利用者構造の変化を掘り下げています。あわせて参照してください。

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