ニュースの概要
米国のオルタナティブ不動産投資会社Andover Propertiesが、テキサス州パインハーストにあるセルフストレージ施設を取得した。賃貸可能面積は約4万6,000平方フィート(約4,300平方メートル)で、空調管理型ユニットと車両乗り入れ型ユニットの二本立てである。立地はヒューストン都市圏の成長回廊にあたり、周辺人口は年率2.4%を超えるペースで増え、世帯所得の中央値も10万2,000ドルを上回るとされる。大型の都市型施設ではなく、成長する郊外の中規模物件を選んだ点が特徴だ。
引用元: Andover Properties、テキサス州パインハーストのセルフストレージ施設を取得(PR Newswire)
分析・見解
4万6,000平方フィートという規模が持つ意味
米国のセルフストレージ施設は、10万平方フィート超の大型物件を上場REITが取り合う構図が目立つ。一方で今回の約4万6,000平方フィートは、その半分以下の規模である。大手が手を出しにくく、地元の個人オーナーが売りに出しやすい帯域だ。競争が緩いぶん、買い手は価格交渉で有利になりやすい。
また小型物件は、運営の工夫で収益を伸ばす余地が大きい。賃料の見直しや管理の効率化が、そのまま利益に響くからである。
空調管理型と車両乗り入れ型を組み合わせる狙い
空調管理型は、温度と湿度を一定に保つ収納である。テキサスは夏の高温多湿が厳しく、家具、衣類、書類、楽器などを預ける人には必須に近い。通常ユニットより賃料を2〜3割高く設定できるため、収益の柱になる。
車両乗り入れ型は、ボートやキャンピングカー、業務用トレーラーを置く需要に応える。郊外では庭や駐車場に置けない車両が多く、住宅の規約で屋外保管を禁じる地域もある。つまり景気が悪くなっても手放しにくい「生活に根づいた需要」である。性質の異なる二つの需要を持つことで、収入のぶれを抑えられる。
人口2.4%増と所得10万ドル超が支える需要
年率2.4%という人口増加は、米国平均の数倍にあたる。人が増えれば住み替えが増え、住み替えの合間には荷物の置き場が必要になる。引っ越し、リフォーム、相続、離婚など、収納が必要になるきっかけは人口が多いほど増える。
世帯所得が高い点も重要だ。支払い能力があるため賃料の値上げに耐えやすく、延滞も少ない。ヒューストン都市圏は住宅供給が旺盛で、新築戸建てが小さな区画に建つことも多い。その結果、自宅に収納スペースが足りない世帯が増え、外部の倉庫を借りる動機になる。
供給過多の懸念をどう見るか
もっとも、楽観ばかりではない。2021〜2023年の需要急増期に、全米で新規開発が相次いだ。テキサスも例外ではなく、周辺で新設施設が増えれば初年度の賃料を割り引く競争が起きる。
生き残る鍵は、立地の優位性と運営の質である。主要道路から見えるか、競合まで何分か、オンラインで契約まで完結できるか。こうした地味な差が、稼働率の差になって表れる。今回の取得は規模が小さいぶん、運営力で差をつける勝負になると言える。
ビジネスへの影響
郊外の小型物件が投資対象になる条件
不動産投資を考える経営者にとって、この事例の教えは「大きいことが良いとは限らない」である。見るべきは三点だ。第一に人口の伸び率、第二に所得水準、第三に周辺の競合施設数である。人口が毎年2%以上増え、世帯所得が高い地域は、需要が長く続きやすい。逆に、どれほど利回りが高くても、周辺に新設計画が多ければ数年後に賃料が崩れる恐れがある。
運営の工夫で収益を伸ばす実務のポイント
小型施設は、管理の手間を減らすことが利益に直結する。無人運営の仕組みを入れ、オンライン契約、電子錠、自動請求を整えれば、人件費を抑えられる。空調管理型の比率を高めて平均賃料を押し上げる手もある。また、近隣の工務店や引っ越し業者、不動産会社と提携し、紹介で空室を埋める方法も安価で効果が大きい。
日本でもトランクルーム需要は都市部で伸びている。海外の運営手法は、そのまま参考になる。まず自社で扱う物件の稼働率と賃料の推移を点検し、空調の有無で賃料差がどれだけ出るかを確かめることから始めたい。小さな改善の積み重ねが、規模の小さい物件では最も確実な収益改善になる。